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新しい風が吹いた日 (斎藤優貴 ギター) [コンサート]

久しぶりにこのシリーズらしいフレッシュな感覚が戻ってきました。

このリサイタルコンサートもやはり延期なった公演の振り替え。斎藤優貴さんも、すでに数々の国際コンクールで賞をとっていて世界的に注目されているギタリスト。ただしドイツ・ワイマール留学中で滅多に日本に帰ってこない。

だから、会場にはかつて師事した先生や仲間、同級生たちがお祝いというのか応援というのか、とにかく、たくさん駆けつけている。ホワイエはさながら同窓会のようでもあり、客席にも若やいだ雰囲気がある。

だから、新しい風が吹き抜ける。

それが、若手演奏家の登竜門と言われてきた「明日への扉」シリーズの本来の魅力なんだと思います。

クラシックギターというのは、クラシック音楽のなかでは、少数民族みたいなものでしょうか。それだけに好きなひとにはディープな世界なのでしょうし、実際に楽器を手に取って演奏するファンも多いのでしょう。だから、ふだん聴いていないひとにとっては雰囲気が若い。そういうところも、この日のフレッシュな雰囲気の隠れた配剤なのかもしれません。

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プログラムには、スペイン、日本、ラテンアメリカと、エキゾチックなことがあたりまえという作曲家が並ぶ。大御所のソルなど、ギターの本場スペインの曲がとても正統的に聴けるのが不思議。日本人の現代作曲家がずらりと並ぶけれど、いかにもギターらしい曲想と技巧で、ことさらに奇をてらうようなジャポニズムは皆無。

休憩をはさんで、斎藤さん自身が編曲したドビュッシーとラヴェル。さすがによく知った曲が並んでいるのですが、どれもがまるでギターのほうがオリジナルかと思わせるほどでびっくり。「ゴリウォーグのケークウォーク」なんて、もうピアノでは聴けないかもしれない。「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、こうやってギターで聴いて初めてベラスケスの王女像が浮かび上がってきました。

最後は、ラテンアメリカの作曲家たち。

ギター愛好家にとってはあたりまえのレパートリーなのかもしれませんが、門外漢にとってはとても新鮮。ピアソラだってちょっと違って響きます。こういう世界は、一般的なクラシックファンにはとても新鮮に響くはず。そういうレパートリーの取り上げ方にも新しい世代が吹かせる風を感じます。それもこのシリーズの本来の姿であるはず。――個人的には、バリオスが気に入りました。

これで、振替公演はすべて実現したようです。次回の「第31回」からは、番号通りに順次若い人々が登場します。


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紀尾井 明日への扉28
斎藤優貴(ギター)
2022年3月4日(金) 19:00
東京・四ッ谷 紀尾井ホール
(1階 7列3番)

斎藤優貴(ギター)

モレノ=トローバ:組曲《スペインの城》
  〈モンテマヨール〉、〈マンサナレス・エル・レアル〉、〈トリハ〉、〈レダバ〉
ソル:幻想曲第7番 op. 30
武満徹:すべては薄明の中で~第4曲
藤倉大:チャンス・モンスーン
藤元高輝:秋の三貫握り
鈴木大介:エチュード第9番〈誰もいない家〉

ドビュッシー/斎藤優貴:《子供の領分》
  小さな羊飼い&ゴリウォーグのケークウォーク
ラヴェル/斎藤優貴:前奏曲ホ短調&亡き王女のためのパヴァーヌ
バリオス:ワルツ第3番&第4番
ピアソラ:ギターのための5つの小品~ロマンティコ&コンパードレ
ブローウェル:魔法の守護者たち

(アンコール)
斎藤優貴:海(紀尾井ヴァージョン)
バリオス:過ぎ去りしトレモロ
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